Motivation
髙原研究室(Nelph)では金属のナノフォトニクス「プラズモニクス」と人工的な電磁媒質「メタマテリアル」を利用した先進フォトニックデバイスの研究を行っています。プラズモニクスでは光アンテナとナノ電気機械システム(NEMS)の融合によるアクティブ・プラズモニクスの研究をはじめ、究極のナノ光集積回路の実現の鍵を握るプラズモニック導波路をベースとした表面プラズモンポラリトン(SPP)の伝送と制御、金属ナノ微粒子の発熱を利用したサーマルプラズモニクス、一軸性誘電体を用いたナノフォトニクスなどの研究を行っています。メタマテリアルでは、メタ表面を利用した熱ふく射制御による赤外線エミッター、完全吸収体とその応用、高解像度プラズモニックカラーの実現、四重極子を用いたダークモードの応用の開拓などの研究を行っています。この二分野は関連が深いので、一体としてその興味深い物理を探求し、デバイス応用をめざしています。
Research Topics
プラズモニクス
金属表面の自由電子が光と相互に振動する表面波であるSPPは、回折限界以下の狭い領域を伝搬できます。我々はSPPを利用した光デバイスやナノ光集積回路の実現をめざしています。図1は湾曲した金属ナノワイヤーの橋を伝搬するSPPの様子です。薄膜中にSPPをナノオーダーの厚さで閉じ込めながら、20μm以上伝搬させることに成功しました。回折限界のため電子集積回路と比べると微細化が遅れている光集積回路の重要な要素としてナノの光配線を目指しています。また、金属ナノワイヤーを中空担持し、NEMS技術を用いて動かすことで、動的な光アンテナを実現することに成功しました(図2)。光アンテナは光の吸収、放出の効率を飛躍的に向上できるキーデバイスとして注目されているほか、光・熱変換機能をもちサーマルプラズモニクスにも応用できます。
2次元メタマテリアル(メタ表面)
可視域から遠赤外域までの幅広い波長域にわたる光のメタマテリアルの研究を行っています。本研究室では特にメタ表面の「吸収」を構造により制御して、表面の反射スペクトルを自在に操り、機能性を与えることを目指しています。 我々は分割リング共振器とよばれるプラズモニック共振器を基板に並べてメタ表面を構成し、熱ふく射スペクトルを制御することに成功しました(図3)。これは全く新しい原理の高効率赤外光源、完全吸収体、太陽熱発電、スカイラジエーター等、多くのエネルギー分野に応用できます。白熱電球のフィラメントに応用すると、エネルギー変換効率100%に近い高効率な白熱電球の実現も夢ではなくなります。この他にも金属・誘電体・金属構造による10万dpiの高解像度プラズモニックカラーを実現しています。