博士前期課程及び後期課程の大学院生を募集しています
光は人間が目で世界を認識する最も身近な情報媒体であり、太陽光線を通じて温かさや自然に恵みをもたらしてくれるエネルギー媒体でもあります。このような我々にとって身近な媒体である光に関する科学・技術の体系がフォトニクスです。
フォトニクスといっても様々な分野があって広いのですが、高原研究室(通称「ネルフ」、Nelph: Nano ELectronics and PHotonics)では人工的に作製した微細構造体で光を自在に操ることを目指す「ナノフォトニクス」、中でも特にプラズモニクス(Plasmonics)やメタマテリアル(Metamaterial)などの基礎研究を行うとともに、企業とも積極的に連携して、その製品化を推進しています。ナノフォトニクスの研究を行っている研究室はいくつかありますが、当研究室の特徴は実際に自分の手でデバイス(素子)を作製して、そのデバイスで実験を行うことを重視していることです。
当研究室ではこれまで、金属構造のナノフォトニックデバイスであるプラズモニックデバイスの研究を行ってきました。負の誘電体である金属を用いたナノメートルサイズの光ガイド「プラズモニック導波路」を用いると、光を回折限界以下の領域に閉じ込めてガイドさせることができます。これを集積回路の光配線に応用すると、電子集積回路(~15 nm)と光集積回路(~1 μm)のサイズの大幅な違いをなくし、ナノ領域で両者を融合することができます。これにより電子回路の微細性、機能性と光回路の高速性を兼ね備えた光電子集積回路を実現することを目指しています。
金属構造を2次元に配列させたメタサーフェス(metasurface)も、当研究室が最近力を入れている分野です。特に金属・誘電体・金属(MIM)ナノディスク構造を用いたメタサーフェスは、ある波長の光を完全に吸収する機能を持ちます。これは10万dpiという回折限界にせまる解像度をもつカラー印刷への応用が期待できます。また、熱と光の理想的な相互変換デバイスにもなることから、狭帯域赤外線エミッター、受動型放射冷却素子などへ応用できます。
このテーマの説明をよく理解できなくても全く心配はいりません。当研究室では電磁気学の理論的基盤に基づいて、一から新しいフォトニックデバイスを実現できる人材の養成を行います。光それ自体をサイエンスとして研究することも大きな喜びではありますが、工学部としては産業への貢献を考える必要があります。私の目標はフォトニクスによって地球環境問題を解決するためのイノベーションをおこし、持続発展可能な世界を実現することです。このために私はメタサーフェスを用いた高効率白熱電球のプロトタイプを開発し、自身で起業を行いました。
本研究室では他大学からの学生はもちろんのこと海外からの留学生や研究者を積極的に受け入れたいと考えています。Nelphのあるフォトニクスセンターでは多様なプロジェクトを通じて、企業の研究者や世界中のフォトニクス研究者と交流する環境が整っています。興味のある方は高原までメールして下さい。
大阪大学 大学院工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 教授 高原 淳一